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ジャスミン視点

リチャードに病院へ連れて行ってほしいと頼む。でもその前に、運転席にいるのが本当にリチャードなのか、念には念を入れて確認した。誘拐されるのはもう一生分経験したつもりだ。車が道を飛ばしている間も、自分で運転を習うべきかしら、と心のどこかで考えていた。そうすれば、もっとずっと楽になるだろうに、と思った。

今は普通だ。トイレで朝食を吐き出したことで、どういうわけか胃のむかつきは消えた。ただ、奇妙な空腹感があっただけだ。

「着きましたよ」とリチャードが告げる。見上げると、病院の巨大な建物が目の前にそびえ立っていた。

「ありがとう」車から降りながら微笑む。リチャードがついてこようと...

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