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ニコ

窓を引っ掻く音はますます大きくなり、執拗さを増していく。外にいるのは人間ではない。けたたましく点滅する赤色の非常灯がすべてを地獄のような光で染め上げ、狼としての本能が、危険を告げるあらゆる化学物質の匂いを吸い込んで警告を発していた。

「ここから出るぞ」俺はエレナに言い、ジャスミンが診察台に上がるのを手伝う。「今すぐだ」

「陣痛が来てるわ」エレナは言うが、その目にはパニックが浮かんでいるのが見て取れる。彼女は窓の方に目をやった。「彼女を動かすのは危険かもしれない」

「ここにいたら助からない」俺は反論する。再び陣痛がジャスミンを襲い、彼女は俺の手を痣ができるほど強く握りしめた。「マイ...

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