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ニコ

マイケルを護っていた障壁が消え去った瞬間、フェラーリ一家を数十年にもわたって導いてきた俺の全本能が一斉に作動した。俺の中の人狼が薄紙を破るように人の皮膚を引き裂き、骨が砕けては再生を繰り返す。俺は混沌の存在どもと家族の間に割り込むべく、前方へ躍り出た。

「俺の後ろへ!」声帯が再構築されるにつれて歪んでいく声で、俺は咆哮した。変身の奔流が筋肉を駆け巡り、液体の炎となって灼き尽くしていく。だがその痛みも、塩の塊にできた亀裂から染み出す油のごとく流れ込んでくる影の怪物どもの光景を前にした恐怖に、かき消された。

ジャスミンは赤子をさらにきつく抱きしめている。憔悴しきってはいるが決意に満ちた...

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