チャプター 177

ハリー視点

火曜日の午前九時、心理鑑定が予定されていた。場所は、医療施設というよりは刑務所といった趣の、無機質な政府の建物だった。待合室で座る俺のそばで、アディソンはノートに色を塗っている。その間にもソーシャルワーカーや児童発達の専門家たちは、俺たちの監護下で子供たちが安全であるかを判断するための準備を進めているのだろう。

アカデミー賞授賞式での一件から三週間が経ったが、メディアの嵐が収まる気配はなかった。危機的状況下での子供たちの行動を分析した映像がきっかけとなり、人身売買対策の活動に関わる家族に子育てを許可すべきか否かという、国際的な論争に火をつけていた。

「ケインさん?」五十代ほど...

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