第143話

リディアは、かつて王子の癇癖を目の当たりにする日を夢見ていた。それは主に、自分の息子の癇癖だと想像していたからで、母親であり女王であることに喜びを感じるあまり、子供じみた癇癪など気にもしなかっただろう。しかし、誘惑しようと思っていた成人男性のアルファが怒り狂う姿を見るのは、まったく別物だった。デイモン王子は、シンクレアとの失敗した会談から戻り、エラがとうに姿を消していることを知ると、怒りに任せて彼女の寝室をめちゃくちゃにした。壁を殴り、カーテンを引き裂き、家具を倒して壊す—今や部屋は竜巻が通り過ぎたようで、リディアは嫌悪感と恐怖を感じていた。

彼女は自分の存在を知らせるべきか迷っていた。衛兵...

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