第12章 それもただの発情のサル

総合病院の同僚たちが何度も振り返って私たちを見つめている。私たち三人は今日の病院で最大の話題の的になってしまったようだ。

渡辺光が歩み寄って秋山美咲の腕を掴み、感情の欠片も見せずに私を見つめながら、ポケットから銀行カードを取り出して差し出した。

「これに一万ドル入っている。離婚届にサインして家を出たら、暗証番号を教えてやる」

カードまで用意していたなんて、きっと彼はこの日のために長い間準備していたんだろう。

なのに私ときたら、彼の心変わりに全く気付かず、まだ愚かにも復縁を期待していたなんて!

私はカードを受け取ろうとせず、ただ怒りに満ちた目で二人を睨みつけた。

するとどうだろう、...

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