第14章 彼は誰?

「彼はどこ?」

「電話で急用があって出かけなきゃいけないって言ってたの。私が来た時にはもういなかったけど、費用は全部支払ってくれたわ。ところで、彼って誰なの?人柄もよさそうだし、声も素敵だったわ」森川琴子が意味ありげに私に目配せした。

藤原大輔さんは見知らぬ私にここまでしてくれた。きっと自分の仕事や家庭があるはずだ。

「聞いてるの?」森川琴子がまた私を小突いた。

我に返って、藤原大輔さんが送ってくれた時のことを話すと、彼女はそれ以上追及しなかった。

森川琴子がリンゴを差し出してくれた時、自分の手が熊の手みたいに包帯でぐるぐる巻きになっていることに気づいた。

森川琴子は私を呆れなが...

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