第27章 俺は人の弱みに付け込むような真似をしない

「藤原大輔さん、どうしてそんなに優しくしてくれるの?」階段の手すりから差し込む淡い月明かりに照らされた彼の整った横顔を、私はじっと見つめた。

玄関先で私を下ろした彼は、頭を少し下げ、濡れた髪が垂れ落ちる。喉仏が一度上下して、その瞬間、何か言いたげな表情を浮かべたものの、結局は私から鍵を受け取りながら静かに言った。

「君が辛い思いをするのを見るのは耐えられないんだ」

きっと私は、この人に出会うために、一生分の運を使い果たしたんだと思う。

幼い頃から、本当の愛情を受けることが少なかった私の人生には、お父さん、母、かもめさん、森川琴子しかいなかった。

藤原大輔は私が一番脆い時に、私の人生...

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