第7章 そこに立って、待ってて。

流産したばかりの女が誰かの邪魔をするべきではないけれど、琴子には真実を伝えなければならない。だって、彼女は本当に私のことを心配してくれているから。

電話が繋がる途中、胸が締め付けられるような辛さが込み上げてきて、電話に出た瞬間から、私の声は涙声になってしまった。

「琴子ちゃん、私、何もかも失くしちゃった。赤ちゃんも、家も。私、もう帰る場所がないの」

電話の向こうで一瞬の沈黙があり、落ち着いた男性の声が響いた。

「ああ、今どこにいる?」

私は泣き声を抑え、携帯を見て初めて気付いた。

間違えて藤原大輔に電話をかけてしまったのだ。

「今どこ?さっき降りた場所?」彼がもう一度尋ねた。

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