第8章 水原美香の誘惑

昼食後の水原美香は心が落ち着かず、午前中に水原蛍と高橋逸人の話を聞いて嫌な予感がした。少し考えて、母親の田中夢子に電話して相談することにした。

彼女は事情を話し終えると、電話の向こうが沈黙に包まれた。

「美香、焦らなくていい。焦るのは相手の方なんだから。あなたが焦ると隙を見せることになる。こんな大きな会社に入ってきたばかりの彼女が、どの部署を動かせるっていうの?まずは高橋逸人を手に入れることが重要よ。あとでバレたところで、彼があなたを恨むわけがないでしょう?」

「お母さん、薬をちょっと使うのはどう?」

「お母さんの意味がわかるわね」

田中夢子の助言を受けて、水原美香は焦りを感じなく...

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