第24章 天体望遠鏡を買いに行く

少年は息を切らしながら、服を差し出した。

藤原真央は首を振った。この高級スーツは汚れたら処理のしようがない。

「真央さん、遠慮しないでよ。姉貴に怒られちゃうからさ」

小野隆治は自ら動き出し、藤原翔太の服を取り上げ、スーツを少年に巻きつけた。

そして藤原真央の服を返した。

小野早苗を出されては、藤原真央も断れなくなった。

彼女はコートを着直した。

小野隆治は手を振って別れを告げた。家まで送ろうかと声をかけたい気持ちもあったが、母が許さないことは分かっていた。それに、藤原真央は既に結婚している身だ。距離を保つべきだった。

昔を思い出す。反抗期で道を踏み外しかけた時期があった。姉の...

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