第30章

私は感謝している。佐藤国芳が今この状況でも気持ちを奮い立たせ、私をかばってくれることに。でも彼女が私をかばえばかばうほど、山本翔一の目に映る私への視線はより一層嫌悪感に満ちていくのだった。

山本翔一と佐藤国芳の会話から、私はおおよその状況を把握できた。

あのホームレスは近くの土地収用で立ち退きを迫られた村民で、政府の補償に不満を抱き、社会への復讐心を募らせていたらしい。彼の家族は彼の行動を嫌い、付き合いを絶っていた。普段は窃盗や道で車を止めて金品をせびる程度だったという。

今日は何かの狂気に駆られたのか、突然通りで凶行に及んだ。彼は金持ちを刺殺しようとしたことは認めたが、共犯者がいて佐...

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