第9章

私は山本翔一から花をもらったことなど一度もない。彼はお母さんに花を買ったことがあるし、妹にも買ったことがある。でも、私だけには一度も買ってくれなかった。

彼はそういうロマンチックな人じゃないからと、自分に言い聞かせてきた。でも、彼は明らかに花を買うことができる人だった。

目の前に置かれた艶やかな花束を静かに見つめながら、私の心は複雑な思いで満ちていた。

昨夜、山本翔一が私を置いて佐藤美咲に会いに行ったことへの怒りとつらい気持ちがまだ完全に消えていないのに。

この突然の花束は、まるで暖かい光のように、私の曇った心に静かに差し込んできた。

花を抱える私の両手は震えていた。

花びらに軽...

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