第108章 山本さんはお金で雇える人ではない

心の準備をした後、小林橋はオフィスのドアをノックし、「社長」と声をかけた。

「入れ」佐藤悟の声は普段とさほど変わりなかった。

しかし小林橋はその冷たさを感じ取った。

彼は深く息を吸い、心を落ち着かせながら書類を抱えて入室し、佐藤悟に渡した。「本日ご署名いただきたい書類です。ご確認ください」

「そこに置け」佐藤悟の冷たい一言。

小林橋は素直に置いた。「はい」

急いでいても、早く欲しくても。

今催促したら結果が悲惨なことになるのは明らかだった。

自分の給料、ボーナス、休日、その他諸々の福利厚生のために、まずは社長の機嫌を取ることに決めた。

「社長、お昼にお渡しした資料のことでま...

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