第149章 家がこれから混乱するのを望まない

椎名時夜はバックミラーを通して黙り込んでいる山本希を見て、尋ねた。「社長、何か気になることでもありますか?」

「別に」山本希は椅子の背もたれに寄りかかり、少し疲れた眉間を摘んだ。「これからは彼氏のふりをしなくていいわ。昨夜、佐藤悟さんとそう話し合ったから」

「かしこまりました」

椎名時夜は山本希の言葉にはいつも同意していた。

山本希は少し疲れを感じ、目を閉じて小休止を始めた。

今回の田中おじさんとの会談で、彼女はいくつかの遠い記憶を思い出していた。

彼女は部隊に所属しているわけではなく、ただの市民だった。

だから隊長が必要とする時には戻り、必要でない時は普通の生活に戻ることがで...

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