第172章 佐藤悟が言った、一万円

「佐藤社長」山本一樹は唇の端を微かに上げ、先ほどまでの緊張感はどこへやら、堂々とした態度で挨拶をした。

佐藤悟は軽く頷き、丁寧に返した。「山本社長」

簡単な挨拶を交わした後。

佐藤悟は山本希と山本一樹を中へ案内した。

ドアが閉まるとともに、山本一樹の心臓は喉元まで跳ね上がった。だが会社の社長として、そして酒子の兄として、気迫だけは準備しておかなければならない。

「夕食は済んだか?」佐藤悟は奥へと進みながら、山本希に尋ねた。

山本希は「食べました」と答えた。

「??」

いつ食べたというのか。

佐藤悟は山本一樹の表情の変化に気づいたが、特に触れず、本題に入って山本希と話を始めた...

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