第56章 おそらくまた彼女が濡れ衣を着せられているのだろう

村上奈央は一瞬にして手足が冷たくなり、慌てて自分の手を引っ込めた。目には一瞬の動揺が浮かんでいる。「何よ、妊娠って。わたしが妊娠するわけないじゃない」

どういう状況?

彼女はいつが医術を身につけたのか知らなかった。

「何ヶ月?」山本希は彼女が嘘をついていると見抜き、すぐに追及した。

実際のところ、彼女が本当に妊娠しているのか、それとも自分の脈診が間違っているのか確信が持てなかったが、思い切って尋ねてみた。

村上奈央は彼女の表情を見て、もう隠し通せないと悟った。

うなだれながら答える。「二ヶ月ちょっと」

「なのにまだ彼と...」山本希は婚姻届に名前がある相手が全く頼りにならないと...

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