第74章 座って話さないか?

一時間後。

村上奈央が到着した。彼女は暖色系のコートを着て、茶色い長い髪を下ろしていた。

ボディーガードに送られてきたのだが、電話で坂田和人の言う山本希が自分の友達の山本希と同一人物だと確認していなかったら、こんな夜遅くに辺鄙な場所に来る勇気はなかっただろう。

「坂田さん」村上奈央は坂田和人がドアの前に立っているのを見て、すぐに笑顔で挨拶した。

この方こそ坂田さん。

法律業界の頂点に立つ重要人物で、数多くの売れっ子弁護士たちが近づきたがる大御所である。

「希ちゃんは中にいるよ」坂田和人は穏やかな雰囲気で、外部の人の前では酒子を直接名前で呼ばなかった。「少し酔っているから、後でよろ...

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