第75章 お前こそがそのくず男

山本希の足が一瞬止まった。それから、いつものように淡々と言った。「別に話すことなんてないわ」

「いや、話すことはたくさんあると思うけどな」佐藤悟は彼女のために水をもう一杯注ぎ、目の前に置いた。その動きで彼女の行く手を阻んだ。「例えば、君の初恋は誰だったのか」

山本希は「……」と黙り込んだ。

佐藤悟は「そんなに彼のこと好きだったの?」と尋ねた。

「気になる?」山本希は問い返した。

佐藤悟とこれだけ付き合えば、どんな質問が彼を黙らせるか分かっていた。

しかし今回は彼女の予想が外れたようだ。佐藤悟は彼女の言葉を聞くと、瞳の色が深くなり、身を彼女に近づけ、低い声でゆっくりと言った。「ただ...

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