第111章 まだ村上家の次男を見たことがない

定時間近くになると、松本由美はまだデザイン案の細部を修正していた。突然、入口から騒がしい声が聞こえてきた。

彼女が顔を上げると、村上龍平が一団の人々に囲まれて入ってくるのが見えた。

なぜ彼が宝飾部に?

鈴木千夏との会話、彼が自分に少し心を動かされたかもしれないという話を思い出して...

松本由美は妙に心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

彼女は一度も彼を誘惑しようとしたことはなく、むしろ彼から遠ざかりたいと思っていただけなのに。

なぜ彼は少しでも気持ちを動かしたのだろう?

もしかして、単なる男の本能なのだろうか?

松本由美は視線を戻し、自分の仕事を続けた。ところが...

「松本...

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