第29章 翡翠のブレスレットが村上龍平に買われる

彼女はこの翡翠のブレスレットをよく知っていた。

物心ついた頃から彼女のお母さんの手首に光っていて、祖母から受け継がれたものだった。

お母さんは、由美が結婚したら、このブレスレットを譲ると約束していた。

その後、松本家は没落し、家の価値あるものはすべて売り払われてしまった。

まさか、今日またこの翡翠のブレスレットと再会できるとは思わなかった。

「競り開始価格は4000万円です。最高額で落札となります!」

4000万円!

松本由美にそんな大金があるわけがない!

しかも会場にいる人々は皆、裕福な身分の持ち主ばかりで、この普通の翡翠のブレスレットにはあ...

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