第52章

ホテルのロビーには、すでに見物人が集まっていた。

「北島さん、お怒りを鎮めてください……北島さんも地位のある方なのですから、ここで騒ぎ立てるのは体裁が悪いでしょう。何かございましたら応接室でお話しませんか?」ロビーの責任者は汗だくになりながら、北島美月に丁重に諭そうとしていた。

「私のような身分のある人間の物でさえホテルの従業員が盗むなんて、身分のない人なら、このホテルにどれだけ酷い目に遭わされるというの?!」北島美月は片手を腰に当て、もう片方の手で大理石のフロントデスクを強く叩きながら、責任者を怒りの眼差しで睨みつけた。

周囲の人々が振り向き、中には北島美月を認める者もいた。

知る...

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