第7章

古城美雪は長い睫毛を伏せ、無念そうに視線を逸らした。「兄さん、私と兄さんは大事な話をしているところなの。冗談を聞いている暇はないわ」

「冗談を言いたいところだけど、ゴキブリ人間に絡まれちゃ笑えないよ」古城律は自分のスマホを古城美雪の前に差し出した。

「元旦那からの着信だ」

古城美雪の心が揺れ動いた。先ほど仕事のために押し込めていた感情が再び呼び覚まされた。

「出る?」古城律が尋ねる。

「出るわ」古城美雪は自分を傷つけたあの男が今日何を言うのか聞いてみることにした。そして自分の電話に向かって言った。「兄さん、ちょっと厄介事を片付けるから、後でかけ直すわ」

一方、古城律は電話に出たも...

ログインして続きを読む