第015章

「伊藤社長、冗談を言わないでください」

水原玲は全く近づく気がなく、伊藤剛に微笑んで言った。「伊藤社長、お忙しいでしょうから、お邪魔はしません。失礼します」

彼女は別の方向に向き直って立ち去った。

遠くない場所にいた石川秀樹の表情が一気に曇った。この女、また自分を無視している。

伊藤剛はようやく石川秀樹の方へ歩み寄り、笑いながら言った。「石川社長は今日はお暇なようですね。どうしてお一人でこちらに?」

「暇じゃない。行くぞ」

石川秀樹は長居せず、彼の横を通り過ぎた。

水原玲はエレベーターに乗り込み、ドアがゆっくりと閉まりかけたとき、外から誰かが開ボタンを押した。エレベーターのドア...

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