第045章

「もし誰も教えていないのに、香織がこんなに上手に弾けるなら、天才としか言いようがないね」渡辺勇介は目の前の三人の信じられない表情を見つめながら、丁寧に説明した。

「こう言えばわかるかな、俺たち心理学ではよく催眠術というものを使うんだけど、香織が弾いていたのは、まさに催眠音楽の一種なんだよ。ただ誰にも教わっていないから少し物足りないところはあるけど、方向性は完全に合っている」

「本当かい?」石川秀樹が尋ねた。

「もちろんさ。俺はよく使うものだからね。自分の道具を間違えるわけがないだろう?」

石川秀樹は一瞬黙り込んだ。

階上では、水原千尋もピアノルームから出てきたところだった。ちょうど...

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