第109章

佐藤時言がまだ何も言わないうちに、藤原深は林田ククを彼の腕から引き離した。

林田ククは不意に別の腕の中に落ち込み、頭が藤原深の固い胸板にぶつかって、痛みに「いたっ」と声を漏らした。

藤原深は顔を曇らせ、目に冷たさを宿したまま、眉をひそめて林田ククを見つめ、厳しい声で言った。

「どうして人の腕の中に飛び込んだりしてるんだ?」

佐藤時言は彼の誤解に気づき、慌てて説明した。

「さっきククが足首を捻ったから、ちょっと支えただけだよ」

「聞いたでしょ?」林田ククは立ち直ると、不機嫌そうに彼を押しのけた。

「次からは状況を確認してから、いきなり詰問をしないでくれる?」

別に人の腕の中に飛...

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