第11章 区役所で会う

車内の雰囲気は気まずく、空気が重くて息苦しいほどだった。

田中申助手はバックミラー越しに二人を恐る恐る見た。「あの...奥様、これからどちらへ行かれますか?」

林田ククは顔を上げ、前方を指差した。「前の交差点で降ろしてくれればいいわ。自分でタクシーに乗るから」

さっきはただおじいさんを心配させたくなかっただけで、車に乗ったのだ。

田中申は再び藤原深を見て、目で彼の意向を尋ねた。

男は冷たく言った。「好きにさせろ」

車は交差点を過ぎて停車したが、林田ククはすぐには降りず、藤原深の方を向いた。「会うたびに喧嘩するような生活なんて、もう一秒も耐えられないわ」

「いつになったら時間が取...

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