第161章

水原心柔は林田ククの視線に気づかず、真っすぐ藤原深のところへ歩いていった。

水原心柔が藤原深に何かを言ったのか、彼は突然顔を上げ、冷たい目で林田ククを一瞥すると、先ほど水原心柔を診察していた医師を連れて、彼女と一緒に立ち去った。

藤原深の眼差しは氷のように冷たく、林田ククをその場に凍りつかせた。

彼女はただ黙って藤原深と水原心柔が一緒に去っていくのを見つめるしかなく、胸に鋭い痛みが走った。

唇を強く噛み締め、顔色が少し青ざめた。

そうだ、どうして忘れていたのだろう。水原心柔は藤原深の高嶺の花なのだから、彼女の言葉を信じるのは当然のこと。

高嶺の花が傷ついたのなら、彼は当然そばにい...

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