第181章

藤原深は低く唸り声を漏らし、顔に一瞬痛みが走ったが、林田ククを突き放すことはせず、そのまま彼女に噛まれるがままにしていた。

大きな手がゆっくりと林田ククの背中に添えられ、まるで逆立った小猫を宥めるように、優しくぽんぽんと叩き続ける。

林田ククはその姿勢のまま、ただ口元の力を徐々に抜いていった。

彼女は伏し目がちに、藤原深のスーツに残った自分の唾液と歯型をじっと見つめ、しばらく無言でいたが、藤原深の抱擁の力が少し緩んだのを感じると、勢いよく彼を突き放した。

藤原深はその勢いでよろめき、一歩後ろへ下がる。腕の中が空になり、心のどこかもぽっかりと穴が開いたような感覚に襲われる。

林田ククは...

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