第28章 役を奪われた

水原心柔は顔色を変え、青くなったり白くなったりしていた。そのとき、少し離れたところで車のクラクションが鳴った。

車の窓が下がり、朝日明美が窓から顔を半分出した。「ククちゃん、早く行くよ!」

水原心柔は朝日明美に背を向けていたため、朝日明美は彼女だと気づかなかった。

林田ククも水原心柔とこれ以上言い争う気分ではなく、彼女を素通りして立ち去った。

車に乗ってから、林田ククはようやく朝日明美にさっきの出来事を話した。本当に危なかった、もう少しで正体がバレるところだった。

彼女は水原心柔が馬鹿だから自分で自分を納得させたことを喜ぶべきなのか、それとも自分がこの数年ダメな人間というイメージが...

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