第53章

この言葉を口にしながら、林田ククは自分でも吐き気を催すほど嫌悪感を覚えた。

自分の立場を取り戻すためでなければ、彼女が進んで藤原深にキスなどするはずがない。

藤原深は瞳を幾分か深めながら、低い声で答えた。

「ああ」

???

「ああ」ってどういう意味?これで返事したことになるの?適当すぎるでしょ。

林田ククは彼の態度に不機嫌になった。勇気を振り絞って彼にキスしたのに、無駄だったじゃないか。

神崎遠は思わず口笛を吹いて、からかうように言った。

「兄貴、林田さんがこれだけ積極的なんだから、キスを返すべきじゃないのか?」

川崎おじいさんは笑いながら言った。

「若い者同士のことだか...

ログインして続きを読む