第98章

林田ククが果物を持って書斎に向かうと、ちょうど田中申が中から出てきた。彼は林田ククを見るとすぐに挨拶した。

「奥様、こんにちは」

林田ククは彼に軽く頷き、尋ねた。

「田中さんはもう帰るんですか?果物でもいかがですか?」

書斎のドアは開いていて、こちらを見ている藤原深をちらりと見た田中申は笑いながら言った。

「これは藤原社長に特別にご用意されたものでしょう?私がいただくのは遠慮しておきます。それでは失礼します」

そう言うと、彼はそのまま階段を降りて去っていった。

林田ククは困惑した表情を浮かべた。自分がいつ、これが藤原深のために特別に用意したものだと言ったのだろう?

しかし、田...

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