第10章 母はなぜ彼に会いたくないのか?

星ちゃんは高橋隆司から遠く離れて座っていた。まるで見知らぬ人同士のように。彼女はまだ怒っていたのだ。

高橋隆司の質問を聞いて、さらに腹が立った。あの綺麗なおばさんは、高橋隆司が来るからこそ慌てて去ったのだ。

一瞬でさらに怒りが増し、彼女は高橋隆司を睨みつけると、顔を窓の方へ向けて、高橋隆司を完全に無視した。

高橋隆司も人をなだめるのは得意ではなく、そんな様子を見て気にしないふりをし、前で運転している小林健一の方を向いた。「小林健一、後でその店の監視カメラを調べさせろ!」

彼は自分が女性の声を聞き間違えるはずがないと確信していた。電話で話していた相手は間違いなく江口美咲だった。

小林...

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