第9章 辰兄、キスして

小柄な男を見て、佐藤愛は本能的に少し露出度の高いドレスを掴んだ。

やはり彼女は女の子なのだ。このような状況では、自分を守らなければならない。

体中に広がる熱さを必死に抑えながら、狭い化粧室の中で一歩一歩後退していく。彼女の足取りはやや千鳥足で、その眼差しには殺気が宿っていた。

もし薬を盛られておらず、行動が自分の意志で制御できるなら、きっとこの小柄な男に自分に手を出した報いを思い知らせてやるのに。

「何をするつもり?さっさと出て行きなさい」

「ここは北村家の宴会よ。もし何か無礼なことをすれば、北村家があなたを始末することになるわ」

「出て行って...早く出て行きなさい!」

佐藤...

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