第20章 一夜眠れず

古川有美子は隣の空いた席を軽く叩きながら、塚本郁也に向かって図々しい目線を向けた。

その表情も口調も、極めて挑発的だった。

特に「旦那様」という煽るような言葉は、塚本郁也の目を一瞬だけ暗く沈ませた。

口に出してはいけないことを言う分別のない小娘だ。いや、彼女はきっと分かっているはずだ。

それでも彼を茶化す勇気があるということは、彼が何もできないと確信しているのか?

突然、塚本郁也の口元に意味深な笑みが浮かび、骨ばった指でネクタイを緩めると、余裕のある足取りで古川有美子に近づいていった。

「奥さんがそんなに熱心なら、辞退するわけにはいかないな」

彼はベッドの縁に片腕をついて、古川...

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