第23章 鈴木祐介

塚本郁也の冷たい声は、優しさとは全く縁がなかった。

しかし不思議なことに、人を安心させる魔力を持っていた。彼の言葉を聞いて、古川有美子の落ち着かない心は徐々に落ち着いていった。

何だか急に状況がそれほど悪くないように思えてきた。この人が自分の前に立って守ってくれると古川有美子は分かっていたからだ。

「ありがとう」

古川有美子はもぐもぐと小さな声でお礼を言った。その声は小さかったが、塚本郁也の耳にははっきりと届いた。

二人はすぐに車で病院に向かった。

才行治の病室の前に着くと、古川有美子は重苦しい雰囲気を感じた。心の中でまた不安が湧き上がり、足が少し震えた。

古川有美子は少し尻込...

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