第35章 心が乱れる

「塚本社長、本日の報告書です」

アシスタントが書類を塚本郁也のデスクに置いた。

しかし、今日の塚本郁也はどこか様子が違う。携帯電話を手に何かを…

ぼんやりしているのだろうか?

アシスタントにとって「ぼんやり」という言葉と塚本郁也を結びつけるのは難しかったが、今の男の状態はまさにそうとしか言いようがなかった。

「塚本社長?」

アシスタントが再び塚本郁也の名前を呼ぶと、今度は彼の耳に届いたようだ。冷ややかな視線がアシスタントの持つ書類をさっと流し見た。

「ああ、そこに置いておけ」

「はい」

アシスタントがそうしようとしたとき、塚本郁也がかすかに眉をひそめるのに気づいた。少し迷っ...

ログインして続きを読む