第36章 旦那、何か言ってくださいよ

「古川有美子は?」

塚本慎平は一回歌い終わって戻ってきたが、元の場所に古川有美子の姿がなく、隣にいる鈴木優佳に尋ねた。

鈴木優佳は携帯電話を見せながら、「有美子さんが、あなたの叔父さんの方から用事があって、先に帰ったって。あなたによろしくって」

その言葉を聞いた途端、塚本慎平の顔が一気に曇り、全身から微かな不機嫌なオーラを漂わせた。

鈴木優佳は思わず首をすくめ、心の中ではすべてお見通しといった様子で、彼の冷たい雰囲気に巻き込まれたくない様子だった。

あいにく、そのタイミングで先ほど彼に話しかけていた女の子が近づいてきて、塚本慎平の腕に手を置き、親しげな口調で言った。

「慎平くん、...

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