第58章 何てことだ

古川有美子は口を尖らせ、気まずそうに塚本郁也の隣に座った。こんな時は、やはり旦那に頼るのが一番だろう。

手の痛みなど気にしている場合ではない。今の急務は早く立ち去ることだ。「塚本郁也、塚本慎平の髪の毛はもう調べたんでしょ?問題ないなら、行きましょうよ?」

塚本郁也は彼女の呼び方に耳を傾けた。また名前をフルネームで呼ぶようになっている。

必要な時は「旦那」。

用がなくなれば「塚本郁也」か。

彼は心中で不快感を覚え、喉仏を上下させた。「お父さんの言うとおりだ。夜は引っ越しに向いていない」

その一言で、古川有美子は塚本家にもう一晩泊まることが決まってしまった。

その瞬間、天が崩れ落ち...

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