第34章

葉山風子は手に持ったピンク色のハート型宝石の指輪を見つめ、完全に呆然としていた。宝飾品に詳しくなくても、その宝石の輝きを見るだけで、これが並外れて高価なものだということは分かった。

葉山風子はすぐに我に返った。先ほどの自分の反応が少し大げさだったことを悟り、適当な理由でごまかさなければならないと思った。

「金庫に入れておくって言ったじゃない?どうしてこんな高価なものをこっそり出したの?もし私が無くしたらどうするつもりだったの?」

葉山風子は不満そうに桂原明の肩を軽く叩いた。まるで恋人同士の甘えるような仕草だった。

藤原博は顔面蒼白になって一歩後ずさった。もはや完全に手の打ちようがなく...

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