第6章

「誰がお前なんだよ、給料くれるわけでもないのに。俺に給料くれる奴の言うことだけ聞くんだよ!」警備員は藤原博の愚かな行為に心の中で毒づいた。

そのとき、相澤俊が歩み寄って葉山風子の前に立った。彼は笑顔で言った。

「葉山風子さんですね?昨日お電話でお話しした者です。他の面接者はすでに到着していますので、こちらへどうぞ」

「はい、少々お待ちください」葉山風子は相澤俊に一言謝ると、素早く藤原博の前へ歩み寄った。

「早く行きましょう、これ以上恥をかかないで。これ以上怒鳴り続けたら、警察を呼ばれるかもしれませんよ」葉山風子はそう言うと、背を向けて立ち去った。

藤原博は仕方なく千草グループの建物を後にした。

相澤俊は葉山風子を面接会場の外へ案内した。そこには赤いドレスを着たもう一人の面接者が立っていた。

「葉山さん、ここで少々お待ちください。お名前をお呼びした時に中へどうぞ」相澤俊は葉山風子にそう告げると、ドアを開けて面接会場へ入っていった。

葉山風子は深呼吸をした。少し緊張を感じていた。彼女は前に立っている赤いドレスの美女を見て、少し躊躇した後、軽く指で相手の腕をつついて、笑顔を見せた。

「こんにちは、あなたも面接に来たんですか?」葉山風子はこの丁寧な挨拶に丁寧な返事が返ってくると思ったが、赤いドレスの美女は彼女を見ると冷たく鼻を鳴らした。

「面接に来るなら、もう少しキレイにしてくるべきでしょう。シャツ一枚で来るなんて、田舎から来た素人丸出しね。世間知らずなのが見え見えよ」

赤いドレスの美女は軽蔑したように髪をかき上げた。その仕草で、彼女の胸の谷間がさらに深く見えるようになった。

葉山風子は相手の胸を見て、それから自分の胸を見下ろした。

実は葉山風子の胸も小さくはなかった。相手ほど大きくはないが、谷間を作ることはできた。ただ葉山風子はそういう方法で注目を集めたくなかっただけだ。

「私が単に体で面接官を誘惑できるとでも思ってるの?見なさい、わたしはハーバード大学のダブルドクターよ!あなたはどこの大学の博士なの?」赤いドレスの美女は自分の履歴書を葉山風子の前でひらひらさせた。

葉山風子の元々の自信は一瞬で消え去った。

「容姿も体型も学歴も何一つ勝てない。今日はここまでなのかな?昨日、桂原明の前で大口叩いたのに、こんな情けない姿で帰ったら、どんな風に嘲笑われるか分からないわ」葉山風子は悲しくもやもやしていた。

「次の面接者、小森未海さん」面接会場から相澤俊の声が聞こえた。

「入るわね、田舎娘。早く家に帰りなさい。バスに乗り遅れないようにね」

小森未海は葉山風子に嘲笑うような笑みを浮かべると、面接会場に入っていった。

小森未海がその一言を言わなければ、葉山風子は本当に途中で退出しようと思っていたかもしれない。しかし、そう挑発されると、葉山風子の心の中の競争心が急に強くなった。

「今逃げ出したら、本当に怖気づいたことになる。たとえ負けても、正々堂々と負けよう。決して臆病者にはならない」

葉山風子が自分を奮い立たせていると、突然面接会場のドアが開き、小森未海がハイヒールを踏み鳴らしながら、不満げに出てきた。

「わたしのような優秀な人材も要らないなんて、目が見えてないのかしら?ふん!」

小森未海は葉山風子を恨めしそうに睨みつけると、ハイヒールを踏み鳴らしながら建物を後にした。

「わたし面接官じゃないのに、なんで睨むのよ?」葉山風子は目を回した。

「次の面接者、葉山風子さん、どうぞお入りください」ドアの中から再び相澤俊の声が聞こえた。

葉山風子は深呼吸をして、ドアを開けて入った。

葉山風子は実はこの面接にもう期待していなかった。小森未海のような優秀な人材でさえ採用されないなら、小森未海に劣る自分が採用されるはずがないと思っていた。

「さすが給料最高の千草グループ、社員の面接にこんなに厳しいのね」葉山風子は心の中でため息をつき、履歴書を提出した。

相澤俊は真剣な様子で葉山風子の履歴書に一瞥をくれると、笑顔で葉山風子に尋ねた。

「葉山さんは千草グループがお気に入りですか?」

葉山風子はうなずいた。

「好きです。やはり給料が高いですから」

「葉山さんがお気に入りでよかったです。では、社長秘書の職務をこなせると思いますか?」相澤俊は突然尋ねた。

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