第30章 藤原社長は嬉しくないのですか？

翌日

鈴木美咲は勝田会社のビル前に立っていた。五年経った今、また同じ場所に戻るとは思ってもみなかった。胸が痛む。

かつて藤原隆と結婚したばかりの頃、鈴木美咲は自分に言い聞かせていた。良き妻として最善を尽くすのだと。

だから彼女は藤原のお婆様から藤原隆の会社の住所を聞き出し、わざわざお弁当を届けに来たのだった。

喜び勇んで会社を訪れた鈴木美咲だったが、藤原隆との関係を明かすことができず、受付からは藤原隆を追いかける女性として扱われ、ただ外で待たされることになった。

結婚した日、藤原隆は二人の関係を公にしないと約束させていた。鈴木美咲は彼と結婚するためにそれを受け入れたのだ。困惑した様...