第37章 五年前は佐藤澪

一時間後。

鈴木美咲が藤原隆のオフィスに現れた。

彼女は十分間も立ち尽くしていたが、オフィスチェアに座っている男は、終始一言も発しなかった。

鈴木美咲は確信していた。藤原隆がわざと自分を無視しているのだと。

「藤原社長、デザイン案に一体どんな問題があるんですか?」鈴木美咲はイライラした様子で尋ねた。

藤原隆は書類をめくる動作を止め、目を細めて彼女を見つめ、その瞳の奥には嘲りが滲んでいた。

「鈴木美咲、お前はS市を離れるんじゃなかったのか?どうしてスタジオなんか開いたんだ?」

藤原隆は瞳を沈ませ、詰問するように言った。

鈴木美咲はそれを聞いて、思わず心もとない様子で鼻先を触った...

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