第51章
「絵里、もう少し寝ろう」
背後から自然で親密な声が聞こえ、男性の顎が彼女の頭のてっぺんに擦り寄せられた。
小林絵里は固まった。
これは以前の二人の触れ合い方だった。
朝、彼女が早く起きたとき、和也はいつもこうだった。優しくて甘えん坊で、こんな風に話しかけてくれた。
小林絵里はぼんやりとベッドに横たわり、一瞬過去と現在の区別がつかなくなった。
どうして区別がつくだろうか?
過去も現在も、この言葉を口にする人物は和也なのだから。
胸が酸っぱく苦しいのに、彼女は自分の指を噛んで、起き上がろうとはしなかった。
この抱擁にまだ未練があった。
彼の体温、彼の匂い、彼のすべてに。
時...
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1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
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7. 第7章
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17. 第17章 

18. 第18章 

19. 第19章 

20. 第20章 

21. 第21章 佳人の嫉妬を恐れない

22. 第22章 嫉妬

23. 第23章 親しい友人が見舞いに来る

24. 第24章 人類の本質は傍観

25. 第25章 謝罪

26. 第26章 あなたが吹いてください

27. 第27章 離婚費用をさらに60億円追加

28. 第28章 座地で値を上げる

29. 第29章 お婆さんが発病した

30. 第30章 夏目夕子に見つかる

31. 第31章 和也を探しているのか

32. 第32章 フィリンの神

33. 第33章 高川寒

34. 第34章 人違い

35. 第35章 彼女のことがまだ好きかもしれない

36. 第36章 あなたはとても凶暴ですね

37. 第37章

38. 第38章

39. 第39章

40. 第40章

41. 第41章

42. 第42章

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45. 第45章

46. 第46章

47. 第47章

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49. 第49章

50. 第50章

51. 第51章

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58. 第58章

59. 第59章

60. 第60章


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