第10章

宮下大介は黙っていた。

宮下大介にとって食べ物はただエネルギーを補給するものでしかなく、味の良し悪しには無頓着だった。

「洗い終わったよ」

鈴木千穂は一瞥すると、きれいに洗われたパプリカと青梗菜が整然と並べられているのが目に入った。強迫観念の持ち主の仕事だとすぐにわかる。

「何を笑っているんだ？」宮下大介は不思議そうに尋ねた。

鈴木千穂は軽く咳払いをして

「別に何でもないわ。先に出ていていいわよ」

「わかった」宮下大介は水滴を拭き取り、軽く頷いた。

鈴木千穂は豪華な料理を作り上げた。味付けは薄めで、ほとんど大野正人が好きな、食べられる料理ばかりだった。

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