第12章

「いやよ」宮下遥は頭を振った。次の瞬間、彼女は顔を赤らめて爪先立ち

「もう少しあなたと一緒にいたいの」

彼女が近づく前に、江口慎吾は主導権を握り、片手で女性の細い腰を抱き寄せ、強引に唇を重ねた。

うわっ!

見物人の群れが再び騒ぎ立てた。

「スゲー!」

「これほど愛し合ってるなんて」

鈴木千穂はこの一部始終を見届け、本を握る指が青白くなるほど力が入っていた。

心はやはり痛むものだけど……表情は恐ろしいほど平静で、ほとんど無感覚だった。

彼女は思った、慣れれば大丈夫。

禁煙でさえ離脱症状があるのに、六年間愛した人なら尚更だろう。

鈴木千穂はこれ以上留...

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