第37章

頭を上げると、宮下大介の顎が彼女の頭にほとんど触れるほど近く、彼の腕の支えがなければ、彼女は完全に彼の胸に倒れ込んでいたことになる……

鈴木千穂は我に返り、急いで二歩後ずさった。

宮下大介は喉仏を動かし、手を引っ込めると、珍しく一言。

「……ハイヒールは転びやすい。フラットシューズの方がいい」

鈴木千穂はくすっと笑い、しばらくしてから言った。

「ありがとう」

なかなか人が来ないので、宮下晴美は物音を聞いて、不思議そうに屋内に向かって声をかけた。

「千穂ちゃん?どうした?」

鈴木千穂は外を一瞥した。

「もう行くね、じゃあね」

「ああ」

宮下大介は拳...

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