第46章

しかし、次の瞬間、その手は宙に浮いたまま、別の手によって止められた。

宮下雅文は眉をひそめ、来た人物を見て、不機嫌な口調で言った。

「お前か?」

鈴木千穂はつぶやくように言った。

「宮下教授、どうして……」

その瞬間、彼女は言葉を詰まらせそうになった。

宮下大介の視線が彼女の顔に落ちる。

「大丈夫か?」

鈴木千穂は頷いた。「うん」だが、その声は鼻にかかっていた。

大丈夫なわけがない。

「ちょうど車があるから、送っていこうか?」

「ありがとう、お願いします」

宮下大介は彼女を抱き寄せるようにして、その場を離れようとした。

鈴木千穂は自分が崖...

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