第49章

その夜、彼女は体調が悪いと言い訳をして、一人でゲストルームで眠った。

この男とあと一秒でも主寝室にいたら、吐き気を抑えられなくなると恐れたからだ。

あの夜は、本当に暗かった。

風は、冷たかった。

涙は、止まらなかった。

翌日、彼女は病院の婦人科に予約を入れ、総合検査を受けた。

幸い問題はなかった。

それからは、意識的に江口慎吾を近づけないようにした。

彼はまったく違和感に気づかなかった。

そうだろう、外で腹いっぱい食べていれば、家で長い間火が入っていないことなど気づくはずもない。

「本当に汚らわしいと思うの。だから、少し離れてくれない?」

江口慎...

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