第16章

車から男が降りてきた。体格は佐藤悟とほぼ同じで、彼らの方へ歩いてきた。

「悟、ちょっと話せるか?」

男の口調には、おべっかと卑屈さが混じっていた。

佐藤悟は松本絵里を自分の膝の上に押さえつけ、窓をわずかに開けた。

「手短にな!」

男は車の窓の隙間から中を覗き込もうとし、佐藤悟の膝に絡みついた長い髪を見た。明らかに女が彼の膝に伏せているのが分かる。

「悟、車に人がいるのか?お前ら...なかなか遊んでるじゃないか...」

佐藤悟の声は冷たかった。

「お前に関係ない」

「分かってる、全部分かってるよ。安心しろ、絶対に口外しない」

男は分かったような顔をした。

「結局用件はある...

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